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メンバー様投稿★「ミスと損」(2)



メンバーさんの阪口様からの投稿を2回の連載でご紹介させていただきます。

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 私はナンバからタクシーを拾い、国鉄天王寺駅でおりた。
ICOCA(いこか)カードで改札を通り、国鉄大和快速ホームへエレベーターでおりた。
加茂行き表示確認して間一髪でのれた。車内の窓側に空席を見つけたので、ご婦人に「ご免と」ことわりシートに座る。
ほっと一息した時には、車両は本来のスピード走行している。

加茂行きは間違いないのだが、車両の絵柄が赤をベースに彩(いろど)られていたのが、目の底に残っているのだ。
落ち着けなく、気になりだすと確かめたくなるのだ。
隣のご婦人の横顔を見た、うつむきぎみに本を読んでいる。清楚な気品ある風貌の薄白いうなじに、数本のほつれ毛が悩ましく、料亭の女将のように思えた。

 勇気をだして「失礼ですけどこの電車加茂行きですね」「はいそうですよ」「あ、良かったありがとう」ほっとしたのだ。
気持ちが落ち着くと、車窓から見える夜のとばりの眺め、川向こうの車道をはしる車のヘッドライトが、なお暗闇を深くしていた。
遠くに見える民家の灯、樹木にさえぎられ見え隠れするマンションや、星などに見惚れていた。
とつぜん車掌の声。

「お客さん恐れいりますが券いただきませんか」
「あっどうも」と、ICOCAカード見せる、
「いやこの車両の特急券ですが」
「あっなるほど」
不意を付かれて所定の料金をはらう。
軽い酔いもあり、小銭財布が軽くなったと、思えば丸損ではないのだ。
あほらしさが軽い気持ちに変わっていた。(負け惜しみ)かも。

 実直な車掌が離れてから、横のご婦人が「ごめんなさいね、この車両は特急ライナーと、ご存知だと思いこんでおりましたから」
「いいえ、とんでもない、それで判りました、ぎりぎりで乗れましたところがさ、車両の色が違っていたので確かめるためお尋ねしたのですよ、今夜はじめて乗りましたから、貴女に話しかけてラツキーです」
「まあソフトな洒落ですこと」唇が緩んでいた。・・・・
ささいなミスに溜飲をさげている。

国鉄奈良駅下車、帰宅したのは十一時過ぎだった。
翌朝、世話人Aくんに感謝の電話を、と手提げバッグに携帯電話が無い、まさか二日酔いなどあり得ないと念入りに見る。
やはり無い。コートにも無い、背広、ズボンにも無い、神隠しにあったのか!?
顔を洗いなおして深呼吸した。
なぜか空恐ろしい不安が、脳裏をウロチョロしている。
気を静めて再度かばん、コート、背広ズボンを調べてもない。
 空虚な思いのあまり、パシッとホッペタを叩いた。痛くてもないものはないのだ、胸の鼓動が激しくゆれうごく。
いたたまれなくなりだすと不安が増幅するのだ。

悪用されはしないか、電話帳に登録している方たちに、とてつもない迷惑、あるいは災難に巻き込むのではと、想像する。
身体が雪崩のようにくずれ落ちる恐怖感におびえるのだ。・・・・
ふと、昨夜の行動をふりかえった。
幸いにも受け取っておいた、タクシー領収書の会社へ電話した。
馴れなれしい女性の声「○○タクシーですがご用件は」「昨夜、お宅のタクシー内に携帯電話を忘れました、ナンバから国鉄天王寺駅までと」説明している。(帰車したタクシー内忘れ物なかったからだ)  
「お客さん、ご自分の携帯にお電話なされて、掛かれば大概解決していますけど」と過去の事例からの経験をきかしてくれた。

天にも昇るような思いでダイアルする、呼び出している、拾った相手が出てくれれば、どう言う言葉で応答すべきか?
たかまる胸の鼓動を静めている、待ち焦がれている。
待てども出てくれない、プルル、プルル、とコールしっぱなしだが出てくれない、なぜ出てくれないのだっ?・・・
間をあけて再度したが出ない、つらいときの神だのみ。
しびれを切らす、コールしている限り何処かに有るはずだ、高まる不安が時間と共に頂点にいたる、不甲斐ない自分のおち度に辟易していた。

あっそうだっ!、清楚な気品あるご婦人に話しかけていた、しばらくして車掌の検札をうけた。
知らぬが仏、のつもりでも料金を求められた、慌てて支払っていたのを思いだす。
しかし気分は穏やかではない、バッグから小銭財布を取りだすときに太ももにかすかに、なにか触れた記憶がのこっていた。
悩ましいご婦人へのときめきが、移り気に支配されていた、だからわずかな感触も気がつかなかったのだろう。
男性ならば、ロマンチックなあのうなじから、漂う香水にのぼせるであろう、その出会いのチャンスが「ミス」の瞬間だった。
でも新春呑気会の余韻が、差し引きすればメリットがあったと思わせてくれた、酒は百薬(百楽)の長なのだ。

翌朝、国鉄忘れもの係りへ電話した、加茂駅にて保管していると駅務員の返事「失礼ですが念のためお名前、携帯電話の番号、ケースの色、材質、などお聞かせねがえませんか」と問われ答えておいた。
ミスとは言え、骨折り損は、ガソリンを焚いて遠路加茂駅まで走らされているのだ。
ホームランで悠然とホームベースに向っている、選手の歓喜にも似た思いで、携帯電話を迎えにいった。
連絡しておいたので無事受けとれました、宝くじ当たったような嬉しさである。
国鉄の組織と配慮ある対応に、万感の敬意と信頼に感動した。
私は、うかつなことで済ませる自分は、幸か不幸か迷った。
気の緩みは呆ける、墓穴へ向っているような気がした。
今後、のぼせないよう、ぼけないように。
「常時、細心の注意を」怠ってはいけないと自覚したのである。
丑年、牛の涎のように頭を上げて一歩、下げては一歩、着実に大地を踏みしめて、粗相なき余生を過ごしたい。
雑草のように踏まれても起き上がろう、共々に。
 「ミス一つ、心配二つ、損三つ」
author:ロダン事務局「女将」, category:メンバー様からの投稿, 13:45
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